建築設計と設備トラブル

2023年03月22日

※「建築設備トラブル概論」については、出版の予定であるので、このブログへの掲載は取りやめる。読者の方へは申し訳ない。お詫び申し上げる。

その代わりというわけではないが、連載「マサカの話」のサブタイトル、「建築設計と設備トラブル」について掲載することとする。


「建築技術」という雑誌の2009年8月号に『建築設計者に知ってほしい設備計画の勘所』という特集の監修を行った。雑誌の特集だけで『勘所』が押さえれるようになるわけではないが、建築設計・設備設計の効率があがり、設備に配慮された建物が増えて不具合の減少に役立てばという思いで引き受けたのである。いろいろなテーマのうちの一つ『建築計画に起因する設備のトラブル』の項も受け持ち、「マサカ」というよりも、「マタカ」の事例を紹介した。趣旨は「建築計画が原因のトラブルは設備では対応できないヨ」ということであり、結果として施工者やビル管理をされている方々が対応に苦慮されているところである。

この原因は、今回の建築士法改正(完全ではないが)に至るまで設備設計者に設備設計に関する権限がなかったためであり、法改正以降でも一定規模以下の建物は、建前上は一級建築士が全てを設計する(できる?)ということになっている。 発注者/請負者という関係のあるところでは、下の者の意見は通りにくく、また建築設計業界特有の「権威勾配」の存在が「マサカ」というより「マタカ」のトラブルがなくならない原因であることは以前にお話したとおりである。

◆建築計画が原因の設備トラブル

建築設備のトラブルは、大きく分けると設備独自のエンジニアリングに起因するものと、建築計画に原因があるものとに分けられる。

設備トラブルというと、一般的にはエンジニアリング面からの対応が求められることが多い。施工不良によるトラブルやシステム構築上の不具合など純粋に設備設計・施工に起因するものは、金額の多寡は別として手直しは比較的容易である。しかし建築計画が原因のトラブルは、設備関連のスペース配置や平面計画、階高など手をつけられないところが原因の場合が多く、小手先の処置ではこれに対応できないことが多い。しかも通常は、エンジニアリング対応で何とか解決されるので、情報が設備設計者はもちろん建築設計者まで届かないこともあって、その後の計画・設計で根本的な原因には手をつけられていないことが多い。

これは品質管理に関するいわゆるPDCAサイクルが回っていないことを意味している。

これらトラブル情報が建築設計者に伝達されず建築計画上の常識となっていないと、あちこちで同様なトラブルとなる。これらは「マサカ」ではなく「マタカ」のトラブルである。ビル管理の皆さんにとって、「何でこんなことしてあるの?」と疑問をもたれるような建築設計や設備設計が多いのはこのせいである。

よくあることであるが、一度形や内容が決まったものを変更するのは非常に難しい。したがって計画途中で設備技術者が改良・改善を求めても通らないことが多い。

「マタカ」がなかなか減らないわけである。

このようなことは手元に構造技術者・設備技術者のいない、意匠専門事務所の物件で発生しやすい。設備設計者、構造設計者のいる総合事務所ではこのような事例は比較的少ない。上記の特集号では設備設計者・構造設計者の建築計画当初からの参画の必要性について強調しておいた。

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