建築設計と設備トラブル(2)-③   ~建物の形は法律で変わる~

2023年03月29日

◆敷地ポテンシャル評価

 建築計画の最初期の作業は、上記の制約内で建物の形や規模を決めてゆくという、いいかえれば計画地の持つ可能性を評価する作業といえる。街中に○○㎡の土地を所有していても、それだけではどれほどの価値を保有しているかは不明である。住居地域の場合は、どの程度の規模の建物が建てられるのか、建蔽率や容積率で判断可能であるが、実際には各行政の指導要綱に制約を受けることもある。商業地域では容積率は大きいが、上述の規制や斜線により制限されることが多く、容積率いっぱいの建物は建てられないことがよくある。

 マンション計画の場合は、土地情報の入手から土地の購入の間に必ずボリュームチェック図の作成という工程が入る。ボリュームチェックすなわち、対象敷地に建てられる建物の規模がどの程度なのか、これがわからなければマンション建設の事業計画は出来ない。事業者側としては、与えられた容積率目いっぱいの規模の建物を建てたい。しかし現実は上述のように制約が多い。従って敷地のポテンシャル評価すなわちヴォリュームチェックが必要なわけである。しかも急いで決断しなければ、いい土地はほかの事業者にさらわれる。この段階ではもちろんデザイン云々は問われない。建築設計者にとっては手馴れた作業とはいえ、結構忙しい仕事である。土地を購入するかどうかのチェックだけのための単独の作図行為であるから、大手デベロッパーでは若干の費用負担はしてくれるが、実際は実費にもならない。中小事業者ではそれすら支払ってもらえないケースが多く、これも建築設計事務所の経営を圧迫する要因である。

◆設備設計者の早めの参画

 一般ビルの場合でももちろん「敷地ポテンシャル評価」は必要である。したがって、ヴォリュームチェック図的なものはもちろん検討されるが、設計行為の一部となっているので、別途にフィーをいただくことはない。

 問題はこの段階で設備設計者が参画するかどうかである。前回紹介した「建築技術」8月号では、「計画段階から、設備技術者の参画を求めること」を、『設備計画の勘所』のひとつに上げた。こんなに早い段階から設備設計者の関与が必要か?それは敷地ポテンシャル評価には階高の要素が不可欠だからである。同じ高さ制限、斜線制限の中では、階高を低くして階数を多くすれば、建築面積が大きくなり、容積率が有効利用できる。しかし建物の種類やフロアあたりの面積の大きさによっては、天井高や設備スペースに支障をきたすことがある。無理して階高をつめ容積率目いっぱいの計画をしても、設備の機器類や配管・ダクトが収まらなくては意味ない。結局手戻りとなり、無駄な時間を費やすことになる。計画初期での法チェックは「敷地ポテンシャル評価」につながる。この意味でも設備・構造技術者の参画が必要なのである。

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