建築設計と設備トラブル(2)-① ~建物の形は法律で変わる~
前回、建築設計者にゆとりがなければ設備に配慮した設計ができないと述べたが、今回は建築設計者の忙しさの原因と設備設計者の早めの参画の必要性について述べる。
◆多くなった法規制
建築設計の着手にあたって、最も大切なことは設計条件の把握である。対象となる建物の種類に応じて要求される条件は異なり、これに計画地の敷地条件や事業者側の使用条件が加わる。最近では環境配慮計画は必須の条件である。
設計業務の手順として最初に来るものが、法的設計条件の洗い出しである。これを無視しては建物は建たない。主なものをあげると、都市計画法、建築基準法、消防法、各地方条例、や要綱である。また、旅館業法や駐車場法など建築の種類によって定められている法律にも、建築計画に関連する条項がある。そのほか法規以外の規制類もある。
建築計画に当たっては、建築設計者は「法チェックリスト」や「プロジェクト申請業務リスト」を作成し、敷地や建物に関する規制をチェックし遺漏の無いように対応している。これらはA4判で2ページ以上にわたることもある。特に最近は各種手続きが煩雑になってきているので、計画に入る前にそちらの手順の確認が重要である。それでも「エッ!そんな規則があったの?」というようなことはよくある。
しかも、これら法規の内容は、年々複雑な物となり多岐にわたるため、建築設計者にとって大きな負担となっている。各種要項などは毎年変わるものもある。最近では各行政がホームページで情報を公開しているが、検索が楽になったとはいえ煩雑さに変わりはない。一例として建築基準法を上げると、昭和56年版でB6版767ページであった法令集が、平成18年の法改正以降の物でA5版1700ページとなっている。文字数の違いも入れると3.15倍となっており、設計料率が当時より低くなっていることを考慮すると、建築設計者の負担がいかに増加しているかがわかる。
先日若い友人の設計事務所に行ったら、法令集は同じような厚さで2冊に分かれ、東京都建築条例は別冊になっていた。