建築設計と設備トラブル⑨-②  ~社長名の始末書は鬼の首~

2023年05月01日

◆始末書の相手先は同レベルで

トラブル・クレームの内容や先方への影響は多種多様である。したがって始末書や詫び状の書き方もいろいろある。現役時代には、下書きもあわせコピーをとっておいて次回の参考とした。先方にお詫びしなければならないようなトラブルはそんなにたびたび起きるわけではないので、何年もたっていると書き方を忘れてしまうのと、状況によって書き方が違うためでもある。

この際に大切なのは、先方の宛先と、当方の差出人の立場である。上記のように社長名で出すわけには行かなくとも、責任ある立場の者の名前で泣ければ先方に対して詫び状にならない。先方は社長から課長までいろいろな立場はあるが、詫び状などを提出するようなケースはある程度は大事件であるので、記憶では部長クラス以上の方が宛名のことが多い。当方は先方より格上の方の名前となる。相手が役員や社長の場合は、小生では役不足となるが、それほどのケースは記憶にない。

詫び状や始末書は会社の立場にも係るので書き方に苦労する。そのたびに文例を参考に文書作成したが、今なら、パソコンに入れておい修正して提出するところである。

施工上のトラブルや機器類の不具合については、施工業者や、メーカーの報告書があっても設計事務所としての見解の入った報告書を求められることが多かったが、書き方では苦労した記憶はない。

◆部下の不始末に謝りたがらない上司

トラブル・クレームの対応は危機管理の一部であるから、話を広げないことが肝要である。したがって担当者だけにまかせず、必要に応じて上司が出てゆくことが必要である。しかし中には管理職としての立場を理解していない方がいて困る。

「君がミスしたのに、なぜ俺が謝らなけりゃ行かないのさ」という方には、「僕みたいな下っ端を叱りつけてもどうしようも無いでしょ?しかるべき立場のものに一言言いたいんですよ。あなたは僕の上司なんだから逃げられないんです。そのために給料もらっているんですよ。」などと、重い腰の上司を教育するのも結構大変であった。

先ごろの、トヨタ自動車のトラブルの場合は、豊田社長がアメリカで謝罪したのが好印象で、その後の業績回復につながっているようであるが、今回のお話のようにような小さなトラブルの場合と違っているのはもちろんである。

 管理職になってからは、事業者側へのトラブルの報告は担当者任せにせず、適当な時期に先方に顔を出すようにしていた。事業者側には顔見知りが多い。「山本さん久しぶりだね。今日は何か?」「いや、○○ビルの件でね」「アーあれね。山本さんに来てもらうほどの事じゃ無いでしょ?」「いや、いきさつを詳しく知りたくてね。それと、皆さんにも最近挨拶していないから。」ということで、筆者のトラブル情報が蓄積されたのである。これには面白い話がある。担当者からは「山本さんは来ないでください」とのこと。先方の部長さんと顔見知りの方が同席していては、当社を責めにくいのは当然である。

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