建築設計と設備トラブル(11) (2010年8月号) ~現場調査①~
今月も現場調査に伴う話の続きである。
◆敷地の形状
建物を計画する際には、与えられた敷地条件の確認が必要であることは、この連載で「建築基準法が決める建物の形」と題して以前に述べた。これらは法的な規制であるが、設備設計の立場では、インフラの有無と、敷地の形状がポイントである。
敷地は道路に接していることが原則である。
インフラの引き込みは道路側からが基本であるが、排水、雨水の放流が難しい土地もある。
- 道路のほうが高い敷地
このような敷地の場合一番困るのが排水をどちらに流すかである。汚水・雑排水はポンプアップ排水で道路の本管に放流するが、雨排水は出来たら自然放流としたい。敷地が何も建っていない空き地の場合は、雨が流れ込んでも隣地の持ち主が黙認することもあるが、建物が建てば勝手に雨水を流すわけにはいかない。本意ではないが、雨排水もポンプアップすることが多い。以前に「川に流せぬ敷地の雨水」でご紹介したような「マサカ」の解決法(道路の排水本管を深くしてもらった)は例外である。
計画地に以前から建物が建っていた場合、隣地を経由してその先の道路に上下水が接続されている場合もある。この場合は隣地所有者の同意を必要とするのはもちろんである。
- 旗ざお状敷地
前面道路への狭い通路に給水・ガス・雑排水・雨排水・電気が引き込まれ、メーター、ピラーボックス、排水枡が設置される。入り口通路だけでなく、車の出入りもある。引き込み管類の収まりばかりでなく、工事の進捗にも影響がある。
- 坂道に接した敷地
インフラには直接関係ないが、敷地や建物内への道路雨水の浸入が問題となる。道路は中央が盛り上がっており、雨水は道路の両側を流れる。地下駐車場などへの車路があると、L字側溝のない場合は普通の雨でも常に道路の雨水が車路に浸水する。この形はあちこちで見受けられ、土嚢を置いてあるところもある。建築家の配慮不足でみっともない。L字側溝があっても、車の出入り口は低いので、集中豪雨時でなくても浸水するのでハンプなどで盛り上げておく必要がある。
- 2つの行政区域にまたがった敷地
建築計画も面倒であるが、設備計画も手間がかかる。このような敷地はおおむね大規模であるから、片方だけに引き込み・排出というわけにはいかない。当初は両方の行政との折衝が必要である。面積比率や、どちらの敷地により多くの建物(住戸)があるかなどにより、折衝先が決まることが多いが、雑排水・雨水排水に関しては手近なところに流したいので、両者との折衝が必要である。
- 敷地内排水に行政の技術基準が適用
行政によっては、自分たちの屋外排水の技術基準を、計画敷地に適用することを求められることもある。おおむね厳しい基準のことが多いので、大規模敷地の場合は排水勾配が取れなくて苦労することがある。