建築設計と設備トラブル(3)-① ~標準外業務のあれこれ~

2023年04月01日

建築設計者でないのに、建築設計者の負担が大きく、報酬が少ないことを気にしているのはおかしいと思われる方もおられるだろうが、設備設計が建築設計に含まれている現状では、設計料一つ取り上げても設備設計に未来がない。

この原因の一つに複雑になった法規制の話を上げたが、今回は建築設計・設備設計の標準外業務についての話である。

※なお、10年以上前の記事であるので若干現状とは違っているかもしれないが、それほど変わりはないと思う。

1.設計・工事監理等の業務報酬基準の改定

建築の設計・工事監理等の業務報酬基準である旧建設省告示第1206号は本年1月7日に改定され、「国土交通省告示第15号」として官報に公告、同日付けで施行された。これは、耐震強度偽装事件で社会資本整備審議会での答申を受け、設計報酬の適正化が図られていないことも発生原因の一つとされ、小委員会で昨年から検討され改訂に至ったものである。

あれほどの事件でA元一級建築士が得たものは単なる安定収入であり、事業者側からの紹介ということで建築事務所からの構造設計料の値切られ幅が小さくなったという程度の、内容の大きさと比べ、実質的な見入りは大変ミミッチイ犯罪である。

裁判で、ベンツを持っていることに対し、被告が「でもローンです」といったと叩かれていたが、設計料がいかに安いかという現実についてもっと上手に主張してほしかった。勿論やったことがいいといっているわけではないが、どこに問題の所在点があるのかが、より明らかになったことであろう。その意味では設計報酬の見直しに手をつけていただいたことは、設計者側としては大変望ましいことである。

改定の主な内容をあげると、「建築物の用途を4類型から15類型に細分化」し、標準的な業務量は従来の「工事費」別に対し「床面積」別となり、なおかつ「総合(意匠と統括)、構造、設備ごと」に分けることが示されたことである。

また、業務量については、総合の業務量は標準的な「1類」と複雑な設計が必要な「2類」に分けられ、設備・構造については高度な技術が必要とされる難易度に応じて係数を乗じて調整することとなった。特に設備については、「機能水準が高い設備が設けられている建築物にあっては1.4倍を標準とする倍数を乗じる」となっている。

問題はこの基準どおりの報酬がいただけるかどうかであるが、後述のように「標準外業務」が再確認されたこととあわせ、旧告示と比べ改善されたことは喜ばしい。

ただし、設備の工事監理の標準業務量は低すぎる。これはアンケート対象の事務所のうち、設備技術者のいない事務所のデータが入っているためと思われる。建築設計報酬は値切られることが多いので、建築設計者だけの事務所の場合は、監理段階の定例会議等に協力設備事務所を呼ばずに自分たちだけでまとめてしまうケースが多い。建築設計者が直接ゼネコンやサブコンと打ち合わせて工事監理を行っても素人目にはかわらない設備が出来上がるが、設備設計者がいないと細かいところで、建築設計者の無理が通りやすい。この面での改善も欲しかったと思う。 

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