建築設計と設備トラブル(5)-② ~建築設計の着手前業務~

2023年04月14日

◆着手前業務の重要性

建築の場合は建物を建てようという、発注者側の意思決定のためには、ラフなものとはいえ計画図(企画設計図)を作成しなければならないのが問題である。どのようなものが建てられるのか分からないでは、発注者側では意思決定できないからである。したがって実際の設計に着手する前の作業が必要となる。基本計画図(企画設計図)と概算予算書により、事業計画が明らかになり、事業者側で計画に対し意思決定がなされれば、設計業務が始まることになる。通常はこの時点で設計契約となるが、なかなか契約してくれない事業者も多い。

 しかし、基本計画図作成には、以前の法的規制が緩やかな時代と比べかなりの手間がかかる。

基本計画図(企画図)作成のためには既述のように計画地の法的規制条件の把握が必要であり、これをクリアーしながら事業者や建物独自の要求事項を盛り込む事が必要である。しかもこの段階で手落ちがあれば事業が成り立たない恐れもあるので責任は重大である。特に建物の収支に関わる有効率(貸室面積比)の算定に関しては、いい加減な作業はできない。設備設計者や構造設計者の早い段階からの参画が必要なゆえんである。

それだけでなく、次項に述べるように、建築図の変更が多い。技術スタッフは変更のたびに付き合っていられない。当初計画時に概略の考え方を示しておき、後は変更図をチェックする程度であるが、大きな変更や技術的課題が発生した場合は、もちろん初めから計画の見直しということになる。

これは実質的には既に設計行為であり、この段階の作業量が建築設計業務全体に占める割合は以前から大きくなってきている。

意思決定のためのとはいえ、(正式な)設計業務に着手する前の「着手前業務」の業務量については事業者側に認識してもらう必要がある。

この着手前業務をどの程度設計報酬に反映できるかが設計事務所生き残りのための必要条件であり、広く建築設計事務所制度存続のポイントと考えられる。しかし依然として、一般的にはこの作業は営業業務の一環で設計を受注するためのサービス業務と捉えられている。

基本計画(企画設計)については、設計の流れの節目の段階であるから、簡単なものであっても計画書をまとめておくことが多い。また、「(仮称)○○ビル基本計画書」として成果品の提出を求められ、報酬をいただくこともある。この場合にはそれなりに充実した内容のものが作成される。

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