建築設計と設備トラブル(7)‐①~設計図面の整合性について~

2023年04月22日

先月の月刊誌、週刊誌云々の話は筆者の現役時代の話である。現在は図面整合性が厳しく要求されているだけでなく、着工後の変更が難しくなっているので(確認変更申請の出しなおしと、その間の工事停止のため)、実施設計に入ってからの事業者側や意匠設計者の恣意的な変更は少なくなってきているとのことである。従って建築に対する具体的な内容決定は基本設計段階にシフトされてきており、今まで以上に基本設計の重要性が認識されている。それに伴い朝刊・夕刊レベルの忙しさは前倒しされている。

最終的に納品される実施設計図は、大きく建築・構造・空調・衛生・電気に分けられる。基本的には構造・設備設計図の基になる建築図は同じはずであるが、現実の設計工程では下記にお話しするように、各分野ごとに設計の着手・完了時期が違うため細かなところで違いができる。以前は特に確認申請図と実施設計図(積算用、工事契約用)との食い違いが大きかった。

今回は確認申請に伴う問題点と、工事監理段階での設計変更についてお話しする。

◆確認申請で求められる図面整合性

建築実施設計図の作成は、基本設計図を基に始められる。基本設計段階では、要求される諸室の配置や階高、機械室やシャフトスペースなどは検討されて図面に反映されている。これを基に各分野で計算・設計に入り、基本設計の建築図が再検討され、フィードバックが何度も繰り返されて最終図となる。もちろんこの段階で事業者の細かい要望も反映されなければならない。

 建築設計の中間段階での節目は建築確認申請図の提出である。確認申請図作成のためには建築設計図が必要であり、それを下図に構造・設備の確認申請図が作成される。下図用の建築図は通常一般図と言われ、1/100又は1/200の建築平面図、立面図、断面図、及び1/50の矩計図である。

 確認申請図作成の期間を最も必要とする部門は建築構造設計である。従って実施設計に入る時期は構造設計が最も早い。また、実質的には構造確認申請図=構造設計図であるからここに使われる建築図の下図(一般図)は最後まで変更されてはいけない筈であるが、従来は設計の進行に伴い変更されてしまうのが実情であった。

 確認申請図作成には設計期間が必要である。構造設計期間を2ヶ月とすると、-建築設計にはその分の余裕があることになる。(設備の確認申請用図面作成は、構造着手後約一ヶ月)この期間中にも設計業務は進行するので、一般図には事業者側の要求や設備の検討事項が盛り込まれたり、建築が詳細を煮詰めた部分が反映されたりする事となる。したがって、確認申請用建築図が構造や設備に渡された下図と違っていることはよくあった。筆者も確認申請図の説明を役所で行った際、疑問点について「建築図はどうなってますかね?」と照合され、違っているのを見つけられて、アッと驚いて冷や汗を流したことはよくあった。設備の場合は赤ボールペンの修正ですむが、構造の変更は本来はオオゴトである。このような状況を放っておいてはいけないと図面の整合性が厳しく求められるようになったのである。

また、構造設計は確認申請図の提出と同時にほぼ完了したことになるが、建築設計や設備設計は、確認申請図の審査期間中(約一ヶ月)も詳細図や自動制御図など、申請に関係ない図面が進行し、実施設計図の完成となる。

建築基準法改正以前は、この審査期間にも事業者側の設計変更要求が押し込まれ、場合によっては構造上動かせない柱や壁以外は確認申請図と実施設計図が大きく違っていることさえあった。勿論このようなケースでは変更申請等によって審査機関の了解を得るが、設計者にとっては余計な手間であることに変わりはない。

以上の要因により、建築設計図、構造設計図、設備設計図夫々に違いができてしまうのである。これを是正して整合性のある図面、言い換えれば施工図(=竣工図?)を作成する過程が工事監理段階とも言える

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