建築設計と設備トラブル(11) (2010年8月号) ~現場調査②~
◆上水道整備
よほどの規模の開発事業でない限り、市街地で上水の供給を受けられないことはないが、30年以上前の計画で、上水使用量が大きく、夜間給水を求められたことがある(受水槽は1日分の容量)。
ただし、地域によって色々な指導があり、確認申請業務と連動(事前に上水の申し込み)する場合もあるので要注意である。また、負担金(申込金)の多寡も関係する。最近ではマンションの直結増圧方式を求められることが多い。
使用しないメーター類はもちろん撤去するが、大きな開発の場合は、図面にない配管があって工事中の事故になることがある。
- 「共同住宅扱い」適用事例
以前は高級マンションで外国製の器具を使う場合は要注意であった。水道器具は(社)日本水道協会(JWWA)の認定品を使わなければ、マンションで各戸のメータをいただけないことがある。引き込み管の太いメーターを基準に料金算定したら、水道料金は大変な金額になる。対応策は「共同住宅扱い」の申請で、各戸の水道料金を、一般の戸別引き込み並みにすることが出来る(詳細説明略)。この場合は私設メーターでの料金清算業務が発生し、マンション管理者に手間が発生する。貯湯槽方式の中央給湯システムの場合も適用可能である。
- 井水の利用は熱の利用も忘れずに
地下水の使用に規制がない地域では、井水の利用が多い。特に水の使用量の大きい病院では、高額な水道力金を嫌って井水を利用するところが多くなってきている。この場合は専門業者に水質等の調査依頼となる。
井水の利用では、某地方都市で受水槽が単版構造であったので、結露したことがある。反省点としては、熱交換して空調の予冷用になぜ使わなかったのかであった。戦後間もない頃は、井水冷房がよくあったが、最近はこの技術が忘れられているようである。省エネルギー時代は井水を利用する場合は、冷熱源としての積極的な利用も考えるべきであろう。
◆下水道未整備
今でこそ下水道の普及率は都会では100%近くになったが、筆者が現役の頃は都内でも浄化槽設置が必要なところがあった。しかし整備の進行状況によっては、竣工後まもなく放流可能となる場合がある。この場合は計画・竣工時期を下水放流可能時期まで延ばしたこともあるが、「事前放流許可」という裏技も使った。これは文字通り告示前に放流させてもらうことで、供用開始時期以前の下水道本管の整備状況によっては、建物からの排水管接続可能の場合に許可される場合があった。
地域によっては、雨水・汚水の分流地域と合流地域が混在しているところがある。接続を間違えると、東京・王子駅のように、便所排水を川へ排出するという「マサカ」の事態となる。(※用事このような事例があった)解決が長引いたようであるが、一般には排水が川まで到達する前に排水桝の開口から臭気が上るはずである。
下水道未整備の場合は、浄化槽の設置が必要である。この場合は、放流水の排出基準と放流先がポイントとなる。放流先は川か海であるが、漁業権との関連があるので、折衝に時間がかかる。
公設桝の既設再利用・廃止や新設、増設、位置や深さの変更など、折衝事項は多い。
◆雨水流出抑制
かなり以前から、現場調査で気をつけなければいけないのは雨排水である。内水氾濫など集中豪雨被害が多くなってきているので、各自治体は雨水流出抑制措置を指導している。雨水貯留層や地下浸透施設を設置することが求められるが、具体的な技術基準が異なるので注意が必要である。また、雨水量や浸透量の計算などが求められることもあり、給水・排水の現調より手間がかかる。
なお、ガスについてはガス会社にインフラ調査を依頼している。