建築設計と設備トラブル(13)(2010年9月号) ~現場調査④~

2023年05月13日

◆建物の配置・出入り口は風に配慮する

 計画上やむを得ない場合もあるが、基本的には冬の風向きの風上側には出入り口を設けないほうがよい。設ける場合は風除室を設け二重ドアとしているが、以下の事例の様に効果がない場合もよくみられる。風の吹き込み対策には、やはり回転ドアが効果的である。早い復権が待たれる。(※当時回転ドアの事故が問題になっていた)

 ◆床上の風は、コアンダ効果で奥まで流れる

冬季の室内は暖かいので、冷たい侵入外気は床上を流れる。したがってコアンダ効果により奥のほうまで届くことが多い。

  • 事例1:ホテルロビーの足元が寒い

某ホテルで姪の結婚式があり、春先にもかかわらず、待ち合わせ中の1階のロビーのソファで足元が寒く感じられた。二重扉の内側からは10m以上離れていたが、コアンダ効果で風が届いたものとおもわれる。その奥のラウンジでは床が若干下がっていた。クレームになっていないのか気になった。よく見られる事例である。

  • 事例2:進入外気はエスカレーターを下る

出入り口近くにエスカレーターがあると、侵入外気がストレートに地下階に流れ込む。店舗ビルであったが、地下1階の売り場の店員から寒いとクレームが付いたことがある。

◆風の通り抜け 

風上・風下側に出入り口があると、風の通り道が出来るので、これに面した諸室で足元が寒くなる。筆者の経験したビルでは、1階の出入り口が北面に、B2階出入り口が西面であった。3層スキップの構造であり、内部階段により一体化された空間であったため、北面出入り口からの冬の北風が西面出入り口に吹きぬけた。竣工後最初の冬に外部に風除けをつけた。現在は、出入り口に温風ヒーター付きエアカーテンを設けてある。

 この他にも、風の吹き抜け通路が出来てしまい、風上側出入り口に扉や風除けをつけた事例はよく見かける。

◆足元が寒い地下の飲食店

 冷たい風を防ぐには出入り口で防ぐのが効果的である。設計時点では、外気の進入に配慮し、ファンコイルユニットを風除室に設置しておいたが、工事段階で取りやめとなって、予想どおりのトラブルになったことがある。大型複合ビル地階の飲食店舗で、外部への直通階段近くのテナントから足元が寒いというクレームになった。工事監理担当者と事業者側との合意の上でのことであったので責任問題にはならなかった。

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