建築設計と設備トラブル(5)-① ~建築設計の着手前業務~
建築の計画・設計に起因するトラブルについて書くつもりで『建築設計と設備トラブル』というサブタイトルとしたが、なかなか本論に近づけない。これには、書いているうちに、建築計画・設計の流れに潜在する問題点を明らかにする必要が生じたからである。しばらくお付き合い頂きたい。
先月は、地方分権についてやや後ろ向きの意見を述べさせていただいたが、再開発計画等で補助金をもらう場合の建築設計者の作業量も馬鹿にならない。筆者も経験があるが、地方官庁側の業務量も合わせると、無駄な作業だなというのが実感であった。この場合は別途の費用は頂いたが、内容的には設計ではなく、補助金をもらうための作業のお手伝いといった、単なる雑務に近い感じであった。補助金の対象になる施設・部屋・部材の追加変更とそれに伴う図面の変更と対象工事予算書の作成が主要業務であったが、仕事とはいえあまりやりたくない。
再開発に限らず、補助金をもらうには、所轄の中央官庁に納得していただくための理由付けが必要である。そのための資料の作成や会議の時間、上京しての説明の時間等、地方にとっては結構な負担である。金の出所の一部は地方からであるので、俺達の分は勝手に使わせてくれという要望は尤もであろう。
◆建設計画への意思決定と設計
建築の設計はどの時点から始まるか。常識的には着手した時点ということになろうが、「設計業務」として考えた場合は、発注者(事業者・施主)の意思決定の時点から始まると考えてよいであろう。意思決定により設計が発注(契約)されるのであるから、受注前の(計画)作業は営業的な位置づけということになる。
建築設計の工程は大きく分けると基本計画(基本構想)・基本設計・実施設計の3段階となる。これに発注者(事業者・施主)側の意思決定という要因を加味すると、基本計画は意思決定までの業務といえる。したがって基本計画段階を企画設計と呼ぶこともあれば、基本計画の前に企画設計を入れる考え方もある。
意思決定後、設計着手となるが、建物の諸条件を煮詰めて発注者による内容決定を求め、計算・作図に入れるように計画をまとめる事が基本設計である。実施設計は計算・作図段階であり、詳細な検討が要求される