建築設計と設備トラブル(6)‐①~季刊・月刊・週刊・日刊・夕刊・号外~

2023年04月18日

今回のテーマは建築設計のプランニング変更の間隔についてである.先号で建築設計者が何度も設計変更を行っている話をしたが、建築設計図の完成に至るまでは、詳細部分の煮詰めや部分変更を含めて数え切れないほどの変更図面の発行がある。基本計画(企画設計)が承認され、実施設計段階になると図面変更のインターバルは段々と短くなる.

筆者の現役時代はCADではなく、図面の作成はトレーシングペーパーで、発行されたものは青焼き(白焼き)であった.したがって新しい図面(変更図)の受領は何か出版物を受け取ることに似ている。これらの図面の発行インターバルを設備設計の側で出版物に例えてみると、計画の段階に応じて季刊・月刊・週刊・日刊・夕刊・号外・と言った感じになるのがおもしろい.

◆季刊誌・月刊誌段階

建築計画の進行には事業者側の意思決定が必要であることは先月号でのべたが、意思決定には時間がかかる.事業者側の社内で、部門や階層ごとに意思決定の段階を踏まなければいけない.そのたびごとに、要求される内容やレベルが高くなり、新たな検討課題が追加され、新しい図面となる.

事業計画に関する事業者側と建築設計者との打ち合わせは、毎週または隔週行われてはいるが、基本計画または企画設計段階では、設備・構造の基本に関する検討事項がそのたびに発生するわけではない.この段階では、設備の出番は月一または数ヶ月に1回程度(もちろんプロジェクトの内容によって違うが)であり、検討用の建築図を受け取るのが季刊誌・月刊誌並みのインターバルとなるのである.

◆基本設計・実施設計段階

さて、事業者側が意思決定をしたからといって、すぐに実施設計図に着手できるわけではない。具体的な内容決定という基本設計段階がある.

設備設計はエンジニアリング設計であるが、建築に組み込まれているため、建築設計がある程度決まらないと設計に着手出来ない.このあたりが機器メーカーの設計や、プラント設計と違うところである.基本設計に入ると機械のスペースやシャフトスペース、梁下スペースなど、建築設計に影響のある要因により、建築図や構造計画を見直す必要がある.もちろん企画図・基本計画図段階で概略の設備計画を行って、大きな建築設計の手戻りは無いように計画はしておくが、建築と設備の接点はいたるところにあるので、建築図面の変更はエンドレスということになる.建築図自体の変更も多い.必要な機能の充足やデザインの見直しも設備に影響がある.設備が検討すると建築図の変更が必要となる。したがって建築図と設備・構造図の整合性を取ることは大変難しい.

 また、基本計画段階と同様に、事業者側社内の段階が上がるたびに変更が起こる.筆者の経験では、地方の某スーパーマーケットで、事業者側の担当者-係長-課長-部長-担当役員とプレゼンテーションが上がるたびに、食品用冷凍商ケースの配列が縦・横・縦・横と変えられたことがあった.事業決定以降の内容決定に関しては担当者・責任者に一任される場合もあれば、上記のように一言口をはさまなければ気がすまない上司もいる.

 この段階では、毎週のように図面が変わり、煮詰まってくると、事業者の要望や設備・構造の検討事項を反映し毎日のように変更がある.週刊誌、日刊紙(朝刊)と同じである.朝の図面がその日の打ち合わせでまた変更になれば夕刊というわけで、時々号外も発行される.建築設計の内容決定までは、図面の書き直しはつき物なのである.

 実施設計段階は、計算・作図業務として、設計事務所で唯一外注可能な業務である.したがって基本設計段階では、即実施設計にかかれるように内容を煮詰めておく必要がある.この段階で基本設計図書をまとめておくと、以降の業務の手戻りが少なく出来る.

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