建築設計と設備トラブル(6)‐②~季刊・月刊・週刊・日刊・夕刊・号外~
◆整合性を阻害する工程管理
上述のように、建築設計図の作成は建築・構造・設備の共同作業の上に成り立っているのであるから、夫々の図面の完成は、時期的にずれているのが当然である.建築図の決定 ⇒ 機械設備設計と機器容量の決定 ⇒ 電気設備設計と容量の決定というように、時間的な差を設計工程に見込んであれば、手戻り設計や工事監理段階での変更は少なくなる筈である.もちろん整合性のレベルも向上する.しかし現状では設計図の完成は各部門とも同じとなっている.これは設計図作成の工程管理が建築設計者の管理下にあるためである.事業者側の内容決定が遅れれば、実施設計の完成を延期するのは当然であるが、設備設計の内容を把握していない建築設計者は事業者側の無理を受け入れてしまう.各部門同時に設計図完成という工程管理で、図面の整合性が取れる筈は無い.その意味では今回の基準法改正で、建築・構造・設備各図面の整合性について厳しくなったのは結構なことではある.この上はより適正な設計工程の管理が望まれる.
筆者の現役時代に、海外物件をハワイの設計事務所に委託したことがあった.このとき先方の事務所で設計工程の打ち合わせがあったが、設備事務所は機械設備図の完成は建築図完成後約1ヵ月後、電気設備設計図はそのまた1ヶ月後を要求しており、設計工程に関する考えがきちんとしていることが羨ましかったことを記憶している.
建築・構造・設備夫々の図面の整合性を高めるためには、ゆとりのある設計工程が必要であるが、このためには事業者側の意識の改革も必要である.
◆お盆の季節に(設計の)幽霊が出る
「季刊」の前に「年刊」もあったという、昔のゆとりのあった時代の話である.
前回、「造注」という言葉についてお話したが、元々事業計画が難しい土地に事業計画を提案するという、バブル期でなければありえない現象であった.しかし筆者がこの業界に入ったころにも、事業計画に向かない事業主所有の土地に、毎年(または隔年)プランニングすることは良くあった. この企画設計はどういうわけかお盆の頃に動き出す.また幽霊が出てきたなというわけである.
四月の人事異動で新たに事業計画部門の責任者になった方は、当然自社所有の土地に関し事業計画の見直しを行う.以前に計画・検討した物件については、もちろん当時の関係者から難しいという状況説明は受けるが、新任部長(課長)としては何か新機軸を出したいし、部下のほうもあまり後ろ向きの態度は見せたくない.という事情の下に、昨年または一昨年に採算が合わないということでお蔵入りした物件の再検討が依頼されることになる.これがちょうどお盆の頃になる.
(事業にならずに)一度ポシャッタ(死んだ)物件がまた生き返ってくるから幽霊である.これを何度か繰り返すうちに、隣地を買収できたり、経済情勢が変わったりで、事業計画が成り立つことがある.幽霊に足が生えて、実際のプロジェクトになるという「マサカ」の話である.設計者側としては大変ありがたい話ではあるが、実施にいたるまでのサービス設計業務量は馬鹿にならないことが多い.