空調設備のトラブル50⑧
2021年10月20日
(19)売れない客室の怪-パイプシャフトからの騒音-
- ホテルで、各階の同じ位置にある客室での騒音がうるさく客を入れられない。
- パイプシャフトが客室に隣接しており、冷却水配管の振動音が伝播して騒音トラブルとなった。
- 配管の防振支持をやり直し、配管にパイプサイレンサーを挿入した。
(コメント)この書では、上記のような『マタカ』のトラブル事例をあげて、その原因について詳しく解説しているのが特徴である。配管系の振動については、流体に起因するものと機器・配管の振動に起因するものに分け、流体による騒音源として、①脈動流、②キャビテーション・サージング、③ウォーターハンマーをあげ、現象と原因を説明してありトラブル発生について理解がしやすい。
筆者の経験では、シャフトと客室は廊下で隔たれていたが、シャフトの点検扉がケンドン式であったため特定の階で扉が振動してクレームとなった。応急の策としては扉と枠の隙間に紙をはさんで音は止まった。最終的には扉の仕様を変えたと思う。扉の固有振動数が冷却水配管の振動と合致して共鳴したためである。
(20)配管朽ちたら露出でよいか-シャフトが狭くて配管の取り換えができない-
- 建築後20年経過し、老朽化したファンコイルユニット配管の取り換え作業ができなかった。パイプシャフトが狭く、配管の他にダクトもあって、大変な手間を費やした。
(コメント)ダクト展開に必要な「階高」と同様に、建築設計者とバトルとなる分野である。シャフトの配置・大きさについて竣工後の影響が大きいので、以下のような解説が詳しく述べられている。シャフトの重要性について理解するのにここまで必要かどうかについては若干疑問がある。
(解説)
- 各空調方式に対するダクト及びパイプスペースの面積の表
- ・・参考資料にはなるが、建築物は個別に違っているので、基準階床面積に対する比率が、2~4%では、計画時の参考にしてもらえるかどうか?
- シャフト内配管ダクト、最小施工スペース図例
- ・・壁面からパイプ・ダクトとの距離、配管・ダクト相互の距離等が表示されており、参考になる。
- 空調機器耐用年数表
- 税法上の減価償却年数。
- ダクト・パイプシャフトについての各種考察。
(21)防火ダンパーも連続すれば送風阻害-送風ダクト、シ フト防火区画による風潮不足。
- 屋上空調機より各階に送風しているが、下層階での送風量不足で室温が満足されず苦情となった。竪ダクトシャフトの防火区画が水平区画であったため、各階に防火ダンパー(FD)が設置され、送風抵抗となって、末端での風量不足となったのである。
- この場合は送風機吐出圧力を増加した。
(コメント)基本的には、各階でのダクト枝管の有無にかかわらず、ダクトシャフトの防火区画は水平区画ではなく、竪穴区画が望ましい。尚、上例では風量測定、試運転調整をどこまでやっていたのか不明である。竣工後にこのような、不具合が発生したとすればオソマツな話である。