空調設備のマサカ②
1.空調設備設計条件の「マサカ」
空調設備設計条件は何を意味しているか?
一言でいえば、熱負荷計算及び機器容量算定用の目安である。事業者側では、室内環境がこの通りになるという認識があり、後述するように温湿度トラブルの原因となるので、筆者の在籍した会社では、設計図の設計条件記入欄には、(機器選定用)と注記してある。
設計条件をチェックすることにより、建物・施設の使われ方の実態と設備内容の食い違いが分るので、省エネの着眼点が見つけやすい。
設計図によっては、空調設備の設計条件の記入のない竣工図がある。海図なしに航行するようなものであるから、このような竣工図の事業所は、設計者に対し設計条件の提示を求めるべきである。
1.1 室内温湿度条件
室内温湿度条件が示されていても、以下のように室内空間すべての場所で同一温湿度になるわけでないことは、空調関連技術者の共通認識である。 しかし、以前は自記記録計などの温度データを見て、「なぜ一定温度にならないのか」という専門外の方からの素朴な疑問に関する説明はよく求められた。ビル管法や建築基準法には、温度条件のみ指示されており、許容温度巾や温度分布、計測方法に関する規定はない。また、平均温度なのか、室温制御の設定温度なのかもわからない。
- 夏の室温28℃について
室内温度環境は日射量、外気温湿度と室内発生熱により左右される。温度を一定に保つためには、室温制御のためのシステムが必要であり、温度制御用サーモスタットの制御幅(デファレンシァル)は±0.5~1.5℃程度である。したがって、室温制御用センサー位置付近でもこの程度の変動幅がある。
室内の温度分布は、在席率、照明点灯率、事務機器使用率等々により大きく変わる。吹出し口、ユニットの配置や、ペリメーター(外壁・窓側)・インテリアゾーンの区分計画と対応機器によってもその差は発生する。この差を、±1~2℃とすると、制御幅と合わせ室温が30℃以上となる場所が発生する。一般的にはやはり窓側が暑くなり、しかも窓ガラス面の輻射熱もある。偉い方が窓側に座っているのも困る。設定温度が低めになるのも止むを得ない。28℃以上の室温でいかに環境を改善するかが省エネルギーの第一歩であろう。
(追記)省エネ対応として室温28℃が推奨されているが、室内すべての個所で28℃とするためには、温度分布に配慮した場合は、温度制御サーモスタットの設定は26℃程度とする必要がある。これは一般的な使用条件である。通常は室温28℃と指導されれば、温度設定を28℃にするであろうから、窓側の30℃は我慢しなさいの範囲となる。したがって、正しくは「室温28℃」ではなく、冷房設備の「温度設定を28℃」と指導すべきであろう。