空調設備のマサカ⑦

2023年01月23日

◇冬季冷房の必要性

 前項の照明負荷の所で、冬季の冷房の必要性について述べた。これは空調関係技術者以外の方々にとっては「マサカ」であってなかなか理解しにくいところである。したがって、冬になると、「某百貨店では暖房していて、室温が高い!省エネに反する。」などという投書が新聞に載ることがある。省エネ項目のウォームビズの効果が余りないことはビル管理の皆さんがよくご存じである。

 筆者も常々「冬の室温20℃が省エネであるいう意味ではないですよ。暖房運転の設定を20℃にしなさいということですよ。」と言っているが、理解してもらうには手間がかかる。

省エネルギーセンター在籍時に、「冬の暖房時の設定温度を20℃にしたらエネルギー削減量はどの程度になるか」について、某ビルで省エネチューニングの調査を行った。この年(平成15年)の夏には、東電の電力危機対応で冷房時の設定温度27℃としたビル(上記とは別)で、前年の26℃のエネルギー消費量データと比較し、顕著な効果が見られた((財)省エネルギーセンターホームページ参照)ので、暖房時の省エネ効果を確認しようとしたわけである。このときは全くチューニング効果が見られなかった。13階建て、延べ床面積約18,000㎡、基準階床面積約1,300㎡の事務所ビルであったが、室温が24℃以下に下らず、冬期の暖房設定温度を下げた効果は検証できなかったのである。このビルの窓は、エアロフローウインドウであって、熱損失が小さいため、室内は年間を通じて冷房状態にあり、冬季は成り行き運転を行っていた。「室温を20℃に設定したら、冷房運転になって省エネにはなりませんからね」というのが、ビル管理責任者の話であった。先月号で「冬の室温20℃について」に述べた事の裏づけである。大型ビルについては、このような状況の建物が多いと思われる。

なお、今後LED照明が普及すれば、冬季暖房の必要性が現在より高くなるかと思われる。現状の冬期の成り行き運転(設定20℃の暖房モードまたは換気モード運転)と比べ、若干といえども暖房時のエネルギー消費量は増えると思うがいかがであろうか。もちろん照明用エネルギーは大幅に省エネとなるが・・・。

1.5 外気負荷

外気負荷は、外気量×(外気と室内空気との比エンタルピの差)であらわされる。したがって、冷房時暖房時とも設計外気条件時が設計上の最大負荷となる。外気温度が高くても、エンタルピは設計条件より小さい場合があることは先月号で指摘したとおりである。

・外気風量:設計条件の在室者数でCO2濃度が1000PPMとなることが目安である。建築基準法告示にある20m3/Hr・人の値では、室内CO2濃度1000PPMを維持できないことは、103話でお話しした。筆者の会社では、この規定が出来たときから、30m3/Hr・人を設計基準にしてきたが、都心部の外気のCO2濃度が高くなって来ている現状では、建設地外気のCO2濃度条件に合わせて一人あたりの外気量を変える必要があろう。

・CO2濃度:室内のCO2濃度が外気の値(350~400PPM)に近い程、外気導入量が在室人数に対し過大であるといえる。

前号で店舗ビルの在室者による負荷の実態について述べたが、外気負荷に関しては、一定の風量のままで、外気量を在室者に見合った風量に調整していない場合は、省エネルギーにならない。したがって、CO2濃度により外気導入量を制御することが省エネルギーにつながるのである。

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