空調設備のマサカ⑧
2.設計条件に示されていない物
空調設備の設計条件は前項に示した他には、隙間風負荷がある(一般には換気回数で表示している)。しかし、室内環境に影響あるものは、上記の他に多数あるが、設計条件に示されていない項目はいろいろある。
2.1室内温熱環境に関する諸条件
室内温熱環境には、温湿度だけでなく、上下の温度差、ドラフト、床・壁・天井の表面温度などが関係する。内装仕上げは建築に関係するから仕方がないが、空調設備設計にあたって、PMVがどうなるかなどは、検討している余裕がないであろう。
2.2中間期の温湿度条件
最大負荷時に対応できる機器を選定してあるので、中間期の室内環境は設定可能というのが設計者の判断であろうが、恒温・恒湿の部屋を設計しているのではないので、室内環境はある程度成り行きとなるのはやむを得ない。しかし、同じ温度でも、夏から秋、冬への変わり目と、冬から春、夏への変わり目では感じ方が違う。換気や外気利用による省エネ運転の目安のためにも、中間期の温度設定は、暑⇒涼⇒暖への変化と寒⇒暖⇒暑の変化に見合った値を示して頂ければありがたい。
なお、中間期に外気冷房を運転した場合、秋の乾燥した日には室内湿度が低くなるので、デパートの家具売り場が困るそうである。また、事務所ビルでも、パソコンのディスプレイが静電気によって汚れやすくなる。ビル衛生管理法の湿度条件の適合率は、冬だけでなく、中間期にも低い。これは、中間期が冷房運転で除湿されるためである。
2.3温度分布
先月お話したように、室内各所で温度分布に違いが生じるのは仕方がない。といって、どのような設備システム・機器・制御にすれば、温度分布の幅がどの程度になるのか?このあたりは、設計条件には織り込まれてはいない。機器類や吹き出し口に関しては、どのような配置の場合どのような温度分布になるなどの実験結果はある。しかし、これらを総合して温度分布±○℃と条件付けするには変動要因が多すぎる。玄関ホールでの上下の温度差や、大きな窓開口のコールドドラフトなど、設計時に一応配慮しても、結局使って見なければ分からない要素が多く、竣工後にサブコンやビル管理者を煩わせることになる。
2.4 自動制御機器の制御巾
これも通常は条件設定されていない。工場設備の設計経験はないが、製品のグレードに関わる要因の場合は設計仕様が決められているであろう。
ビル空調の場合はそこまで厳しくなくてもよいともいえるが、システムや機器がどのように作動するかについての、条件設定は必要と考える。機器類の取扱説明書に載っている場合もあるが、探すには手間がかかる。
また設定変更の可能性や操作性についても条件設定されるべきであろう。熱源機に関しては、冷水温度をあげればエネルギー消費量を節減できることはよく知られているが、ビル管理者が設定変更できないケースがよくある。大型熱源機を勝手にいじられて、故障や不具合になっては困るというメーカーの気持ちも分るは、費用を出さなければ設定変更できないというのも、省エネ活動の妨げである。(最近はどうなっているのであろうか?)