空調設備のマサカ⑩
2.5 グレード設定(続き)
空調設備では、デザイン的にまたは材質的に見栄えが要求される場合は少ない。それでも建築の内装仕上げの材質に合わせることを要求される場合がある。石張りの内壁には、鉄板製焼き付け仕上げというわけにはいかない。消火栓ボックスなどが、真鍮製、ステンレス製などとなっているのはよく見かける。吸込み口が付く場合は、同様にすることが望ましいが、目立たない場所に取り付ければ、このような配慮は不要である。天井取付器具に関しては、材質的な要求がすくないのは、天井材自体がそれほどの品質でないためであろう。ただし、設備設計者は見え掛りにより、高級感が求められる場合があることは忘れてはいけない。
衛生設備の場合は、以前は高級な外国製の水栓類や衛生器具を採用するという手があったが、最近は日本製の器具で充分高級感がある。特にウォシュレットの開発により、国産品のほうが利便性が高くなっている。
ここでちょっと寄り道を。マンションにおける給湯設備は、高級マンションとワンルームマンションとどちらがグレードが高いかである。
給湯設備のグレードの基準は、①給湯量が十分多いこと、②給湯圧が適正であること、③湯温変動がないことのほか、④湯待ち時間が短いことである。このうち①~③は、給湯機の大きさ(号数)や負荷機能の違いはあっても、給湯性能には大きな違いはない。④の湯待ち時間に関しては一般的には、ワンルームマンションの方が短い。高級マンションの住戸ユニットの面積は大きい。ガス給湯機の場合は、配置は制限されることが多いから、水回りまでの配管距離は長くなる。水栓を操作しても、お湯が出てくるまで時間がかかるし、省エネにも反する。湯待ち時間に関してはワンルームマンションの方がグレードが高いということになる。
高級マンションとはいえ貯湯槽方式は採用しかねる。エネファーム方式や、エコキュート方式を採用し、貯湯槽を水回り近くに設置すれば湯待ち時間は短くなるが、今度は湯圧のグレードが若干劣る。またこのような配置のマンションは見かけない。高級マンションの給湯方式のグレード設定は難しいが、通常のガス給湯器の採用例が一般的である。