空調設備のマサカ⑮
2023年02月13日
1.空調設備設計における余裕率
設計条件の余裕は既述したので、省略する。
◆熱負荷計算
- 室内冷房負荷の集計:「顕熱の集計値には、ダクト表面からの負荷、空気漏洩による負荷等を考慮して1.0~1.1(暖房負荷も同様)、空調機やファンコイルユニットの送風機負荷係数1.05を乗じて補正する」
- 室内暖房負荷の集計:「顕熱の集計値には、ダクト表面からの負荷、空気漏洩による負荷等を考慮して1.0~1.1(冷房負荷と同様)、朝の余熱負荷を考慮して間欠運転係数1.0~1.1を乗じて補正する」
◆送風量の算定及び空気調和機負荷の算定
- 冷却能力(Hc)は、冷却コイル出入口空気の比エンタルピ差を用いて求めた値qcに経年係数K4(1.05)を乗じて決定する。(加熱コイルも同様)
- なお、換気回数(ここでは、外気量のことではなく、送風量を気積で割った値)が8回/ h未満の場合は、冷房吹出し温度差を補正し、換気回数を8回/ h以上とする。(ファンコイルユニット併用の場合は5回/ h以上)
- 室内気流確保のためには、ある程度の換気回数が必要であるので、この設計基準では(余裕のある負荷計算に基づく)算定送風量以上にしなさいということを意味している。
- ファンコイルユニット併用の場合は5回/ h以上とあるが、以前に述べた先輩の失敗談で「空気の動きが少なくて「モワッ」とした感じでいやだ」というお話をしたが、この場合は、室内の換気回数が3回/ h程度であった。筆者の経験でも4回以下となったことがある。
- 某デベロッパーの設計基準では6回/ h以上となっていたが、いづれにしても計算値より大きい。・定風量方式の場合の、換気回数のチェックはチューニングの第1歩である。
◆冷熱源機器容量の算定
- 冷凍能力(冷却能力と表示して欲しい)
Hrc=K1・K2・K3・K4・K5・qm
Qm:建築物時刻別冷房負荷集計の最大値
K1・K2・K3:ポンプ負荷・配管損失・装置負荷係数(=1~1.05)
K4:経年係数(1.05)
K5:能力保証係数(1.05)
◆温熱源機器容量の算定(冷・温同じ)
冷熱源機器の場合と考え方は同じであるが、上記K2は、(=1~1.05(温水)、=1~1.1(蒸気))に、
K3は、(=1~1.1(温水)、=1~1.15(蒸気))となっている。
◆ファンコイル他のユニット機器
K4(経年係数(1.05))、及びK5(能力保証係数(1.05))を乗じて算定する。
◆送風機の選定
型番の選定は、選定図がある。電動機出力については、計算値と実使用値との補正係数(=1.1~1.2)を乗じるようになっている。
◆配管及びポンプの算定
ポンプ揚程の算定にも、配管摩擦抵抗の合計に余裕係数(=1.1~1.2)を乗じる事は同様である。
上記のように、空調設備の中には色々な形の余裕が含まれている。各係数の大きいほうの値を採用すると大変大きな数字となる。
以前に話したが、筆者がサブコン時代に熱負荷計算をして機器類を選定すると、上司の方は机の引き出しを開けて、チラリと自分の資料を参照して「もうちょっと大きく」とか、「○○RTくらいで良いよ」とか言って、チェックをしてくれた。
この場合は、設計者によって機器の容量が違うのが問題である。