空調設備のマサカ⑱
◆ゾーニング計画
室内を冷・暖房する場合は、負荷の状況、使用時間帯などによって空調区域を分けることが望ましい。空調の区域を使用条件によって分けることをゾーニングとよんでおり、空調設備計画に当たって非常に重要な要件である。
ゾーニングの要因は以下に述べるようにたくさんある。ゾーニング計画、空調系統の取り纏め、機器選定に当たってはゾーニング区分ができるだけ同じように重複することが望ましい。
◆ゾーニングの要因
- 熱負荷特性による区分
:空調設備の基本に係る事項である。熱負荷特性の異なる室(物販店舗と外壁に面した喫茶店)を1台の空調機で空調を行い、冬期に暑い・寒いで困った経験は、以前にお話した。(『マサカ』の話第38話「こちら良ければあちらが暑い、あちら良ければこちらが寒い」)
:最も基本的なゾーニングはペリメータゾ-ン/インテリアゾ-ンの区分である。また、ペリメータゾ-ンも方位によって熱負荷状況が異なる。
これについてはいろいろな参考書に述べられているので解説は省略する。窓側からの奥行きが5m程度の小さな部屋でこの区分を行っているビルを見たことがあるが、そこまでこだわることはない。ある程度の割りきりが必要と思われる。
:サーバールームやOAルームなど特殊負荷(ヘビーデューティーゾーン)のある部屋はゾーニングを別にする必要がある。計画の当初から分かっている場合は対応可能であるが、テナントが決まってから対応を求められる場合は困る。あらかじめ、位置と対応方法を決めておく必要がある。
:ホテルの写真室は、記念写真撮影までの短時間ではあるが冬でも冷房が必要である。また、ホテルの着付け室や病院の診察室などは裸になって寒いので暖房が必要となる。写真室の場合は、冬季の外気導入、診察室等はエアコンやヒーターの設置で対応することとなる。診察室はある程度まとまれば、同一ゾーニングとするが、個々には別途の機器を設置することが望ましい。
:階層区分も必要である、最上階には(小さいが)屋根面からの負荷があり、1Fは隙間風負荷が大きい。地下階は外壁負荷が小さいのが特徴である。意外な盲点が外部吹抜の上層階である。筆者の経験では、予算の関係で全館東西2系統としたオフィスビルにおいて、2階駐車場の上の階で、偉い方から(本社ビルであった)足元が寒いというクレームを受けたことがある。
- 室用途別区分
:熱負荷特性による区分以外では、この区分によるゾーニングが最も一般的である。ホテルや病院は各室の用途区分がある程度決まっているのでゾーニングは比較的容易である。事務所ビルでも、事務室、役員室、会議室、サーバー室等用と区分がある。
- 室空間の大きさによる区分
:大型店舗ビルでは、基準階が数千㎡に及ぶものがある。梁下のダクトスペースさえ確保できれば、各階1台の空調機でまかなうことは可能ではあるが現実的ではない。1000~2000㎡毎に1台の空調機を設置したいところであるが、量販店などではもっと大きな売り場面積に、空調機1台という建物もある。
- 装置容量による区分
:ワンフロアに1台といっても、床面積が大きい場合は、適切な容量の空調機がなく、特注品となる。通常は、空調機の容量に合わせてゾーニング区分をする。
- 運転時間別区分
:概ね用途別区分と一致することが多い。
- テナント区分(最少貸室区分)
:事務所ビルの場合、フロア貸しにするか、何分割に分けるかにより空調機・ユニットのゾーニングが必要である。大型事務所ビルで時間外運転が申告制の場合、隣のテナントと同一ゾーニングであると、こちらで申告しなくても、時間外運転が入ることになる。
- 計量区分
:ヒートポンプユニットによる個別方式の場合は、電力量で空調動力費が計量できる。この場合はテナント区分と一致することが多い。
- 防災上の区分
:空調機のゾーニングは防災設備の区画(防火区画・排煙区画・スプリクラー区画)とも合わせておくことが必要である。特に排煙区画との一致は重要である。
◆外気供給のゾーニング
:外気供給は空調機ごとに行う場合と、専用の外調機を設ける場合がある。数ゾーンをまとめた外調機を設置する場合は、ゾーニングごとにON-OFFダンパーを設けることが望ましい。
◆個別方式のゾーニング
:室内機が個別になっているので勘違いしやすいが、室外機がゾーニングの基準である。テナント区分や、冷房・暖房の負荷条件が同じ室の場合は室外機ごとにゾーニング区分を行うことが必要である。