衛生設備のトラブル50(学芸出版社1985.07.20発行より)②

2022年01月17日

1.地中・床にまつわるトラブル

(1)天敵に会うとゾッとするー溶剤で接着する管は溶剤で変質する―

  • タイトルは恐ろしいが、要は塩ビ系配管材の腐食事例である。事例ごとに纏める。
  • 事例①状況:竣工直後に、耐衝撃性硬質塩化ビニル管の埋設給水管が漏水した。掘削して取り出してみると、管自体の亀裂による漏水であった。

原因:掘削中に有機溶剤の臭気がするので周囲の土を採取・分析した。結果は有機溶剤による豊潤であった。原因は工事中に建物の塗装業者が外壁塗装に有機溶剤を用い、埋設配管のあたりで調合をやり、希釈・洗浄に用いた水を周辺に流していたためであった。

対策:有機溶剤の合浸した土を撤去。配管は取替え、新しい土砂で埋戻しした。

  • 事例②状況:病院の研究室が7階にあり、6階の病室天井に漏水した。調査の結果流し排水の硬質塩化ビニル管が膨醇軟化していた。

原因:研究室であるので、有機溶剤を流したものと想定された。

対策:有機溶剤は限定した流しに流す様に要望。その系統の排水管は、エポキシコーティング交換に変更した。

  • 事例③:集合住宅で、床材大引きのコンクリート接触面に塗布した防腐剤によって、排水の硬質塩化ビニル管が膨醇軟化したものである。の

原因:床の根太の防腐剤はクレオソートであったため給水用硬質塩化ビニル管がソルベント・クラックを生じたものである。配管を通すために大引きには切込みがあったが、その下面にも防腐剤が塗布されていたため、配管が接触して膨潤軟化したものである。

対策:木材に接触する部分の硬質塩ビビニル管に、外装被覆を行い、直接の接触を防止した。

(コメント)配管部材が、どこで有機溶剤に接触するかは不明であるから、事例としては『マサカ』の話ではあるが、②、③の事例は設備屋としても、気を付けておくべきであろう。


(2)胸を締められギブアップ―切断される鋳鉄管:地盤沈下による漏水―

  • ある会館の1回で床面の亀裂から汚水の臭気が上がっていた。スラブを斫って掘削したところ、汚水排水ポンプの出口側鋳鉄管が梁貫通部分でせん断していた。スラブ下埋設部は突き固めてられており、土砂は振動により管の表面に圧縮力が加わり、長期間の応力集中により疲労破壊現象で亀裂が生じたものである。

対策としては、地盤降下に対して有効な、ナイロンコーティング鋼管(リング付)、ヴィ区トリック型管継手により配管を取り替えた。

(コメント)スラブ床下の埋め戻し部での配管のせん断は『マサカ』の事例である。

小生は、この事例対策ばかりでなく、各種原因による、漏水等のトラブル対応のために、スラブ下配管用には必ずピットを設けてもらっていた。


(3)冷水で身が縮む雨水管

  • 以下2事例共寒冷地における雪解け水によるトラブルである。
  • 事例①
  • コンクリート造5階建ての外壁に立ち下げた、雨水用硬質塩化ビニル管が破断した。
  • 夏季に施工した雨水用配管が雪解け水で収縮破断したものである。建物外周の犬走はコンクリートが打設されており、配管は固定されていた。この書の解説では伸縮は約40㎜であった。対策としては塩ビ管差し込み継手を用いた。
  • 事例②

 :8階建ての屋内パイプシャフト内の雨水用硬質塩化ビニル管が、竪管変芯心部に用いた45度エルボの2か所で収縮破断し、3階の事務室に出水した。

 :3階までが事務所で、4階以上がホテルであったため、雨排水竪管が45度エルボで振り替えられていた。雪解け水で急速に収縮したため派案したものである。

 :対策としては、結露防止もかねて、雨水管を被覆した。

(コメント)寒冷地における雨排水管のトラブルは類書にもある。要注意である。

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