建築設計と設備トラブル(4)‐③~地方分権と建築設計~

2023年04月11日

(4)景観条例

景観系のまちづくり条例には、「○○の歴史と自然を生かしたまちづくり景観条例」、「○○市都市景観形成建築物等指導要綱」、「○○市都市景観条例」等のものがあるが、まちづくり条例の他にこの条例を制定している市町村もある。「風景づくり条例」や「○○市都市美形成条例」などという名称のところもある。

この条例の一例を挙げると、『大規模建築物の景観届出制度として定められた○○市都市美形成条例に基づき、誇りと愛着と活力のある美しいまちを実現するため、都市美に重大な影響を及ぼす一定規模以上の建築物を新築又は増築する場合に、都市美誘導基準に適合するよう配慮し、○○の美しいまちづくりに努めていただくものです。

そのため、都市美の視点をまとめた都市美誘導基準と、景観ガイドラインに沿って、自主的な創意工夫をしていただき、一定規模以上の場合はアドバイザーチームとのデザイン協議を経て、届出していただくものです。』とあり、設計業務に大きな負担増となっている。対象となる建物の大きさは、『次のいずれかに該当する新築、増築、(1)階数:5階以上、(2)高さ:15m以上、(3)建築面積:1,000㎡以上、(4)立面積:300㎡以上』となっており、対象となる建物は多い。また届出時期は『届出は住環境整備条例に基づく事前協議以前、遅くとも同時に行ってください。(建築確認申請を要する行為の場合は、建築確認申請の日までに余裕を持って届けてください)』とある。設計料の数分の一であろうが、この業務報酬は譲れないと思う。

(5)地方分権は建築設計にとって望ましいか?

各地でどんな法規制が出来ようとも、それに伴う業務量増加に見合った設計料をいただけるなら特に問題はないが、頂く物は増えないで仕事だけは増えているのが現状である。その意味では地方分権によって、建築設計にとっては雑務に近い各種地方条例業務が増えてゆくのは望ましいことではないといえる。また条例の内容把握に関しても、建設地が違う場合は、プロジェクト毎に毎回新しい法規制・法体系を学ばねばならないことになる。

 建築基準法の場合は、経験の積み重ねは法に関する理解度の深化につながる。したがって業務効率の向上となることが多い。しかし地方自治体毎に内容が違うということは、経験に伴う業務の効率化にはつながらない。しかも内容が時々変わるので、数年前の経験が生かされないことがある。報酬に反映されない現状では、地方分権が建築設計にとって望ましいことかどうかは疑問である。

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