『設備技術者の修行時代⑥』-1

2021年12月23日

〔2〕STビル現場勤務時代(その4)

≪竣工前後のあれこれ≫

  • 喜んでお受けします:

竣工前か後かは覚えていないが、恒例の追加工事に関するネゴ打合せが始まった。こちらはS所長Hさん、T社の設備担当はMさん。MさんはT社設計監理部発足時に筆者の会社で設計や見積もりの研修を受けている。「俺が実際に見積もりを作ったときは粗利を○○%かけろといわれた。原価だともっと安くなるはずだ。」「そんなに掛かってないって。Mさんがいたころと違うんだから、今はそんな見積もりはやってないですよ」なんてやり取りの後、最後は東京支店長が呼ばれて指値を押し付けられた。Mさんは僕らに「お前んところの支店長は喜んでお受けいたしますって言っていたぞ」と、だからやっぱり見積もりは高かったんだと言わんばかり。所長を始め「喜んで」は余計だったなと苦笑したことであった。

  • 「冷暖房完備」:

9階飲食店街のテナントには周辺にあった店舗も入居していた。ロシヤ料理店「R」は、既存の店の入り口ドアに掛けてあった「冷暖房完備」の看板を、このビル内店舗入り口に持ってきてかけた。いまさら「冷暖房完備」はないだろうと皆で笑ったことであったが、「冷暖房完備」が客寄せになる時代だったのである。

  • 『機械は初日に故障する』・・・オープン当日にエアハン動かず

試運転調整も終わってやっと竣工までこぎつけたわけであったが、オープンにはもう一波乱あった。オープン前日はT社の竣工式の他、現場員慰労のレセプションもあった。夜は所長以下全員早めに現場事務所を引き上げた。勿論2次会もあったと思うがどこに行ったかは覚えていない。僕らが帰って暫くしてから、最上階飲食店系統の2台の空調機が動かなくなり大騒ぎとなった。動力設備工事は空調工事であったので、全員行方不明で連絡がつかない。T社の管理の方々はやきもきされた事と思う。次の日早く出勤されたHさんが動力工事担当のF氏を呼び出してオープン後間もなく復旧できた事は、以前にこの連載で話した。

入社時同じ課のI係長は後日僕らの課長になった方だが、「俺はのみに行っても、居場所は必ず家に連絡しておく」といっていた。S所長も竣工式で気が緩んでいたのであろう。

  • 駅前広場を冷やすのか:

余剰排気ファンがついてなかったので、必要外気を取り入れると便所からの排気だけでは出てゆくところがない。1階の出入り口から余剰外気が盛大に駅前広場に出てゆくこととなった。「渋谷の町を冷房するつもりか」とSさんにからかわれた。

Copyright © 2019-2020  建築設備解体新書 All Rights Reserved.
Powered by Webnode
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう