『設備技術者の修行時代⑥』-2

2021年12月26日

≪竣工後の大きなトラブル他≫

  • 「冷凍機の電源を切ってください」

STビルの中央管理室にはT社の営繕の方々が常駐していた。この時代はビル管理会社はなく、所謂自社の管理技術者による管理の時代であった。石炭焚きボイラーは姿を消していたが、ボイラーマンの言葉は健在であった。ここの所長のSさんにはいろいろ教えていただいた。新しく大きなビルが出来たので中堅社員のほかに新入社員も配属されていた。

何かあるたびに顔を出していたがある日新人のKさんを見かけないことに気がついた。「最近Kさんいないけどどうしたの?」「あいつ高圧盤でやけどしてさ・・・」というわけで『マサカ』の話久々の登場である。

竣工後もターボ冷凍機の調整を行っていたようで、ある日メーカーの営業マンN氏が運転中のターボ冷凍機を止めてもらおうと「ターボの電源を切ってください」と中央監視室に顔を出した。「アイヨ」と気軽に応じたのは新入社員のK氏、高圧のターボ冷凍機が運転中にもかかわらずディスコンを切ったからたまらない。頭から火花をかぶって火傷を負ってしまった。空調屋であるから電気設備は別の世界、こういう事があるのは始めて知った。

先日昔から知っているこのメーカーの方に会って昔話になった。N氏は定年退職しているとの事で、この事件のことを話したが、数年後輩の方も始めて聞いたとの事。格好いい話ではないので、あまり喋らなかったのだろう。N氏周辺の方は皆知っている事なのだが、会社全体のノウハウ(?)にはなっていないことが分かった。

ビル管理者サイドでも、同じ営繕課に数年後入社した方はこの事故を聞いていなかったりと、トラブル情報管理は現在とは比べ物にならない。

  • 空調動力の一斉復旧

中央監視盤は東芝製の当時としては最先端のグラフィックパネル型のもので、ON-OFFの押しボタンが並んでいた。ある日停電があったが、停電時に回路が切れるようになっていなかったため、復電する際にドンと一気に動力が再起動した。幸い1次側には影響がなかったが、この事態に驚いた管理の方から安全上問題であるとして、停電時に回路が切れるように改善した。高速ダクト方式であったためエアハンの静圧が高く、たくさんあったファンの起動方式がスターデルタ方式であったのが幸いしたのではないかと思われる。

  • 冷房期間の長い事と暑い寒いの冬のトラブル

10月になってターボ冷凍機を整備に出したため、冷房できなくなって「暑い」といわれたトラブルでは、室内負荷の大きさを身をもって知らされた。又、セントラル方式のエアハン1台で物販店舗と喫茶店を空調していた系統では、冬期に「こちらよければあちらが暑い、あちらよければこちらが寒い」というトラブルに遭遇した。いづれも本誌2003年12月号に掲載したものであるが、その後の空調設備計画に大変役立つ経験であった。

  • 電気室の扇風機

竣工後の客の入りがよいので、翌年には事務所階一層を店舗階に変更しエスカレーターも増設した。この工事も担当した。その後の夏のある日T社に行くと前の年よりなんとなく暑い。T社の営繕課長は「君のところの工事が悪いから、もう冷房が効かなくなっちゃったじゃないか」という。あわてて中央管理室に行くと、「山ちゃんからかわれたんだよ。デマンドオーバーしないようにターボのベーンを絞ってあるから冷房が効かないんだよ」と教えられた。店舗化に伴い電力使用量が大きくなったせいであった。その後契約電力量は変えたようであったが、電気室は換気量不足となり熱いトランスを扇風機で冷やす事態となった。

Copyright © 2019-2020  建築設備解体新書 All Rights Reserved.
Powered by Webnode
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう